税理士に顧問を頼む意味はあるのか|申告だけ頼む場合との違い
「税理士は年に1回、申告のときだけ頼めば十分ではないか」。ひとり社長やフリーランスの方から、よくいただく疑問です。
結論からお伝えすると、すべての方に顧問契約が必要なわけではありません。ただ、申告だけの依頼と顧問契約とでは、税理士が関われる「時点」がまったく違います。この記事では、その違いと、顧問が向いている方・向いていない方を整理します。
申告だけの依頼は「終わった1年」を扱う
申告だけを依頼する場合、税理士が数字を見るのは、1年が終わったあとです。領収書や通帳をもとに帳簿を整え、決算書と申告書を作ります。
この場合、税理士にできるのは「終わった取引を正しく処理すること」までです。1年の途中で「こうしておけばよかった」という点が見つかっても、さかのぼって変えることはできません。
顧問契約で変わる3つのこと
1. 決算の前に、税金の見込みが分かる
顧問契約では、期中の数字を毎月確認します。そのため、決算を迎える前に「今年の利益はこのくらい、税金はこのくらい」という見込みをお伝えできます。
当事務所では、決算月の前月と決算月の2回、着地予測と納税額の目安をお知らせしています。納税資金を前もって準備でき、決算直前に税額を聞いて慌てることがなくなります。
2. 決める前に相談できる
事業では、あとから変えにくい判断がいくつもあります。
- 役員報酬をいくらにするか
- インボイスの登録をするか
- 個人事業のままか、法人にするか
- 車や設備をいつ、どう買うか
たとえば法人の役員報酬は、毎月同じ額を支払うことが、経費(損金)として認められるための原則です。金額の変更は、原則として事業年度の開始から3か月以内に行う必要があります。決算が近づいてから「利益が出たので報酬を増やしたい」と思っても、基本的には間に合いません。
顧問契約があれば、こうした判断の前にLINEで一言聞いていただけます。判断のあとで知るのと、前に知るのとでは、選べる手段の数が違います。
3. 毎月の数字が、いつでも使える状態になる
毎月の数字が整っていると、融資の申し込みや補助金の申請で試算表を求められたときに、すぐ提出できます。入力の誤りも月ごとに直すので、1年分の修正が決算期に積み上がることがありません。
なにより、「今いくら手元に残っているか」「このペースだと税金はいくらか」が分かるので、投資や採用の判断がしやすくなります。
顧問契約が向いていない方
正直にお伝えすると、次のような方は、年1回の申告依頼やスポット相談で十分な場合があります。
- 取引の数が少なく、ご自身で無理なく申告できている方
- 副業の規模で、当面は事業を広げる予定がない方
- 毎月の数字を見ることに、今は関心がない方
顧問料は毎月かかる費用です。使わない相談窓口にお金を払い続ける必要はありません。
顧問を検討するタイミングの目安
- 売上が伸び、消費税の納税が視野に入ってきた
- 法人化を考え始めた
- 経理に毎月かなりの時間を取られている
- 融資や補助金を検討している
- 今の申告内容が合っているのか、不安がある
消費税は、原則として2年前の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。前年の上半期の売上などで判定される場合もあります。また、インボイス発行事業者として登録している場合は、売上の額にかかわらず納税が必要です。売上が1,000万円に近づいてきた段階は、相談を始める一つの目安になります。
費用はどう考えればよいか
当事務所の顧問料は、決算・申告の料金を含んだ月額制です。個人事業主の方は月20,000円から、法人は月30,000円からを目安としています(税抜。年商や記帳のスタイルにより変わります)。詳しくは税務顧問サービスのページをご覧ください。
「顧問料の元が取れるか」を、節税額だけで測ることはおすすめしません。税金が必ず減るとはお約束できないからです。それよりも、次の3点に価値を感じていただけるかどうかが、判断の基準になると考えています。
- 経理に使っていた時間が、本業に戻ること
- あとから変えられない判断を、間違えないこと
- 税金の見込みが、早く分かること
まとめ
- 申告だけの依頼は、終わった1年を正しく処理するもの
- 顧問契約は、1年の途中で手を打てるようにするもの
- すべての方に必要なわけではなく、事業の段階によって向き不向きがある
「自分の場合は顧問をつけたほうがよいのか」と迷われたら、LINEで状況を一言お送りください。必要がない場合は、そのようにお伝えします。
※本記事は2026年9月時点の法令にもとづいています。
参考:国税庁タックスアンサー No.5211 役員に対する給与、No.6501 納税義務の免除
